元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
令嬢探偵、微笑む



 身体が重い。手足は痺れて動かない。

 まるで金縛りにでもあっているみたいだ、と目を覚ましたシエラは思った。


 身体は動かないものの、やがて意識ははっきりしてきた。ゆっくり息を吐きながら、わずかに動く首を動かして、周囲の様子を見る。

 かなり立派な調度品が置かれた部屋。シエラは部屋の一角にある柔らかいベッドの上に寝かされている。


 そして、今度は反対側にゆっくり顔を向けて、ぞっとした。


 窓際に置かれた椅子に座る人の姿があった。差し込んでくる夕日の光を浴びている、シエラに薬を盛った張本人。ラドクリフ侯爵だ。



「お目覚めのようだね」

「……どういうつもりですか?」



 幸い、声はちゃんと出た。

 意識を失っていたのは、紅茶に薬を混ぜられていたからでまず間違いない。しかしそうなると今の状況に少し違和感がある。

 この部屋は牢獄などではなく、シエラの自室と同じぐらいに広く、ちゃんとした部屋だ。窓も扉も簡単に鍵を開けて開閉できそうで、閉じ込められているという感じではない。もちろん、薬で体が動かないので逃げることはできないが。


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