元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
ラドクリフ侯爵はそう言って、胸ポケットから茶色の薬包紙を取り出した。
そして、シエラの目の前でその中身をさらさらと手に出す。
「初めから貴女には、完全にこちら側になってもらうつもりでいたんだよ。この薬に溺れてしまえば、それを唯一作ることのできるわたしを失うような真似はしなくなるだろう?」
「私にその薬物を使えと言うの?嫌よそんなもの」
「もちろん、言葉でお願いしただけで素直に従ってくれるとは思っていないさ」
「じゃあ何?それに、初めから私を薬物中毒にさせるつもりだったというのもわからないわ。デマール家の件で私が邪魔になるかもしれないと思ったのなら、回りくどいことをせず殺してしまう方が良かったのでは?」
「そうだね。だけどその答えは簡単」
ラドクリフ侯爵はゆっくりベッドの上に乗り、シエラを組み敷くような体勢になった。
「あるパーティーで貴女に一目惚れしたという話は嘘。だけど、貴女の容姿が実にわたし好みなのは本当だ。だから、殺してしまうぐらいなら、わたしの物にしておこうかと思ってね」