元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
彼の生暖かい手がシエラの頬を撫でた。
体中にぞわりとした悪寒が走る。
「そしてこれが同時に、『お願いしただけでは素直に従ってくれない女』の従わせ方でもあるんだ。一度その身体にわたしの与える快楽を覚えさせれば、もう逆らえなくなる」
「やめっ……」
「ははは、その絶望に打ちひしがれる表情、本当に美しい。甘い言葉を掛ければ簡単に落ちてくれると思っていたのになかなか色よい返事がもらえなかったから、贈り物の準備も面倒になっていた頃だったんだ。わざわざ出向いてきてくれたこと、礼を言うよ」
怖い。
唇の震えが止まらない。もう今にも涙が零れ落ちそうだった。
それでもどうにか堪えて言う。
「わ、私はここに来ることをきちんと伝えて家を出てきました。私が帰らなければ屋敷の者たちが怪しんでここまで捜索に来るはずです」
「ああ、そうしたら貴女をこの部屋に閉じ込めていることもすぐに見つかるって?……はは、心配はご無用。貴女はここに来る途中、馬車ごと崖の下に転落して死亡したことにしておく。偽装は既に完了しているよ」
「っ……」
「残念だったね。助けは来ない」