元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
「~~っ、それにしても、何か色々聞きたいことがあるんですけど!」
シエラは、心臓の音と熱くなっていく頬を誤魔化すように、大きな声で言う。
「そもそも何でここに来たんですか?ラドクリフ侯爵が怪しいって知ってたんですか?」
「……君の婚約者になるかもしれない人間が変な奴ではないか調査するうちに、薬物製造疑惑が出てきたんですよ」
「え、調査してたんですか?私のために?」
「完全なる俺の私情なので君のためではありませんよ」
ルシウスはそう言ってから、余計なことを言ったという様子で気まずそうに目を逸らした。
彼はシエラを抱きかかえたまま、ゆっくり屋敷の外へと歩き出す。
「言いたいことなら俺にもありますよ。怪しいと思っても一人で乗り込まず、衛兵を連れて行ったところは褒めましょう。ですがあの人選は何ですか?あんな脳筋ばかり五人集めて……もっと冷静に物事を判断できたり、周りに気を配れる人間を入れるべきでしょう」
「だ、だって、何かあった時に少人数で対抗するためには力に自信がある人じゃないとなって!」