元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。


 シエラは曖昧にうなずいた。

 彼はあくまで頭脳派で、体を使うことは避けていたはず。危険に巻き込まれたとしても、話術で乗り切っているイメージだった。



「この世界でせっかく健康体に生まれたからには、病気が理由で前世では禁止されていたこともしないと損だと思いましてね。十代の頃から護身術なんかを習っているのですよ」

「頭脳明晰で体術も使えて……あの、ルシウスさんはいったい何を目指してるんですか……?」

「目指しているもの、ですか」



 ルシウスは少し考えるように黙って、それからゆっくりシエラの顔に視線を移した。



「大切なものを、自分の手で守ることができる人間……ですかねぇ」

「……!」



 また、心臓が大きな音をたて始めた。


 ……もしかして。

 シエラは彼から目を逸らし、しばらく迷った末に言った。



「ルシウスさん。あともう一つだけ、教えてください」

「次は何ですか?」

「本当あの、間違ってたら自意識過剰だって笑ってくれて全然いいんですけど」



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