元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
ただ、何となく思っただけ。違ったら冗談にしたらいい。自分の中でもそうしっかりと保険をかけてから言う。
「ルシウスさんはもしかして……私のことが、好きだったりしますか?」
シエラを抱えたまま歩き続けていたルシウスが、ピタリと足を止めた。
立ち止まったまま何も言わないので、不本意な勘違いをされて怒ったのかと不安になってきた。
「あ、あの……」
「そうですよ。君のことが好きです」
「ああやっぱそんなはずないですよね!私のことを好きなんてこと、…………え、今なんて言いました?」
ごめんなさい冗談です忘れてください!まで言おうとしていたのに、何やら思っていたのと違う答えが聞こえた気がした。
聞き返されたルシウスは、いつもと変わらない落ち着いた声で、今度はもっとはっきりと言った。
「俺は君のことが好きですよ。前世からずっと」
「……うそ」
「嘘じゃありません。前世で君と過ごした二年間、そしてこの世界で記憶を取り戻してから十年以上。ずっと想い続けていました」