元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
シエラは胸を高鳴らせながら、恐る恐る尋ねる。
「それで、父は何て?」
「さすがに渋られましたよ。俺は血筋も不明ですし、養父も貴族ではありませんしねぇ」
「じゃあ認めてもらえなかったんですか?」
「いいえ?粘りに粘った末、『クレイトン商会の業績を一年以内に今の二倍にすることができたら結婚を認める』と言われました」
ルシウスは、上手く条件を引き出せたというように満足げだが、シエラは「いやいやいや」と首を振る。
「それ多分、無理難題言って諦めさせようとしてるんだと思いますよ?」
「そうですか?」
「だって、確かにクレイトン商会は成長著しいですけど、今の伸び具合から見て、一年以内に二倍はさすがに不可能……」
「シエラ、俺を誰だと思っているんですか?」
シエラの言葉を遮った彼は、難解な謎が解けたときのように、にやりと笑った。
「俺が本気を出せば、一年と言わず半年もあれば十分ですよ」
「ほ、本当ですか?」
「もちろん。……話は以上です。昨日途中で仕事をほったらかしてきてしまったので、今から帰って片付けてきます」