元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
「いや、それがさ……今回そのお嬢様には盗ったことがバレちゃってさ。もう本人に返したよ」
「は?バレた?」
「うん。バレたのはルシウスさんの時と合わせて二回目だよ」
「……よく見逃してもらえましたね」
眉をひそめるルシウスに、レオンは苦笑いする。シエラに言われたことを思い出したのだ。
「二度としないって約束させられたけどね。もし次やったら、探偵の名にかけて容赦はしないってさ。……でもおかげで、この嫌な癖が治せそうな気がするよ。やったらシエラお姉さん失望するなって考えたら思い留まれそう」
「探偵……シエラ……」
「何かシエラお姉さんって貴族のイメージと違ったんだよね。貴族特有の上品さは確かにあるんだけど、親切だし、人を見下したような態度を取らないんだ。おまけに美人。ま、僕のことを小さい子どもみたいに言ってくるのは玉に瑕だけど。……ん?どうしたのルシウスさん?」
隣を歩いていたはずのルシウスが、いつの間にかレオンの後方にいた。道の真ん中で立ち止まり、先ほどレオンを待つ間に読んでいた本を真剣に見ている。