元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。



 何事かと近づいたレオンに、ルシウスが尋ねた。



「レオン。もしやそのご令嬢、シエラ・ダグラスと名乗りませんでしたか?」

「え?いや、苗字は知らないけど名前はシエラだって言ってたよ」

「探偵をしているとも言っていたのですね?」

「うん。僕が人を探してるってこと一発で見抜いちゃってすごかったな。ねえ、でもそれがどうかしたの?」



 ルシウスは黙ったまま、見ていた本をレオンに渡した。

 まだ読み書きの勉強を初めてから日が浅いため詳しくはわからないが、どうやら貴族の少女を主人公にした大衆向けの物語らしかった。



「巷では少し流行っている小説らしいです。客との会話のネタになるかと思い読んでいましてね。簡単に言うと、きらびやかな生活を送る貴族令嬢の主人公には“探偵”という裏の顔があり、様々な事件を解決していくというストーリーです。そしてどうやらその主人公にはモデルとなった人物がいるらしく、その人物の名が、シエラ・ダグラスなのですよ」



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