元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
令嬢探偵、商会長に会う




 街中にあるそこそこ立派な一軒家が、黒瀬と静奈の住宅兼探偵事務所だった。

 一階の一部が依頼人を通すことのできるスペースで、その他と二階が居住スペース。二人で暮らすにしても広すぎるぐらいの建物なのに、静奈に出会う前は黒瀬が一人で生活していたらしい。

 探偵というのはそんなに儲かるものなのかといえば決してそういうわけではない。黒瀬は20代の若さでずいぶんな資産を保有していたが、それは親の遺産とそれを元手にした資産運用で得たものだった。株価なんかの予測がずいぶん得意な上、特にお金のかかる趣味も持ち合わせておらず、静奈を雇う(と言えば聞こえが良いが実際は居候状態)のも余裕だったようだ。

 そのため探偵業は黒瀬にとって、娯楽の一環だった。探偵事務所の看板を大々的に出すようなこともしておらず、ペット探しだとか素行調査だとか、いわゆる探偵の仕事の依頼が来ることはなかった。


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