元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。




「この依頼、クレイトン商会からだわ……ずいぶんタイムリーね」



 いつものように何通もの依頼の手紙を確認していたシエラが、一通のクリーム色の封筒に目を留めたのは、レオンの件から数日後のこと。


 街で出会った少年レオン。彼が働いていると言っていたのが、現在着々と規模を拡大している貿易商、クレイトン商会だった。

 この手紙の送り主は、その時レオンが探していた“商会長”のようだ。封を切って中身を見ると、細かく丁寧な文字が並んでいた。



「ええっと、……先日はうちの者が大変ご迷惑をお掛けしました」



 レオンはシエラのことをどこまで話したのか、しばらく丁重な謝罪文が続いた。依頼の手紙ではなく謝罪の手紙だったのだろうか……と思い始めたあたりで、ようやく話題が切り替わった。

 今少し困ったことが起きていて、自分たちだけで解決するのは難しそうなので知恵を借りたい。万が一他人に内容を知られてはならないので手紙にその内容を記すことはできず、直接会いたい。

 依頼の内容はざっとそんな感じで、手紙だけでは一体何に、誰が、どう困っているのかが一切読み取れない。


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