元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。



「ようこそおいでくださいました。シエラ・ダグラス嬢。クレイトン商会で代表を務めております、ルシウス・クレイトンです」



 彼の形の良い唇が優しく弧を描いた。

 シエラはハッとして、慌てて令嬢探偵モードに切りる。



「初めまして。探偵のシエラ・ダグラスと申します。私でお役に立てることでしたら、何なりとお申し付けください」

「それは頼もしい。立ち話も何ですからどうぞこちらへ。大したおもてなしはできませんが」



 そう言って通された部屋には、綺麗なソファーやテーブルが整然と並べられていた。商談に使う部屋なのかもしれない。

 促されるままにソファーに腰掛けると、老紳士といった風情の男性が紅茶を運んできた。

 この屋敷で雇われている使用人だろうか……と思っていると、その視線に気づいたらしいルシウスが言った。



「彼は先代の商会長が若いときから商会で働いているジョシュアさんです。俺の相談役のような立場ですね」

「相談役だなんてとんでもない。私はルシウスさんと世間話をするぐらいしか能のない老人ですよ」



 ジョシュアと呼ばれた男性はカラカラと笑った。


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