元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
人殺し……ずいぶんと不穏な話だ。
ルシウスはさらに詳しく説明し始める。
「先代というのは、一年前に急死した俺の養父のことです。死因は毒死。何らかの植物毒ではないかとの話です」
「ああ、この手紙にも『毒を盛って殺した』と書いてありますね」
「ただ肝心の毒物は見つからずじまいでした。誰かに毒を盛られたのか、それとも自ら飲んだのかもわかりません」
「自殺の可能性も?心当たりがあるのですか?」
「いえ。ですから、先代は誰かに恨まれて殺されてしまったのだと、商会の内外で以前から噂されていました。その噂の中では、残念ながら俺も容疑者の一人です。それが今回このように脅迫文として届いてしまったわけです」
なるほど、とシエラはうなずいた。
『先代は現在の商会長によって殺された』などという話が広められたら、たとえそれが真実でなくとも、商会が信用を失うことは間違いない。