元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。



「つまり、この手紙を送った犯人を見つけるというのが私への依頼ですね?」



 自分のやるべきことがわかり、シエラは居ずまいを正す。彼はそんなシエラの目をまっすぐ見ながら軽くうなずいた。



「はい。一つはそうです」

「『一つは』と言いますと?」

「もう一つ……先代の死の真相を調べてもらいたいのです。毒を盛られたならその犯人は誰か、自殺ならその動機を」

「えっ……でも一年前のことなのですよね」



 シエラは思わず眉をひそめた。

 手紙のことはいくらか調べられるかもしれない。しかし、先代の死について調べるのは難しくないだろうか。現場が保存されているわけでもないし、当時の状況を正確に覚えている人もそういないだろうから関係者への聞き込みも難しい。

 シエラは腕を組み考え込んだあと、「最善を尽くします」とだけ答えた。



「念のため聞きます。気を悪くしないでください。……この手紙の内容は、事実ではないという前提で考えてよろしいのですね?」



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