元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。


 相変わらず、嘘をついているのかどうかがわからない。

 シエラはメモをとりながら軽く息を吐いた。



「よくわかりました。……後で先代が亡くなっているのが発見されたという部屋を見せてもらうことってできますか?」

「もちろん。あの部屋は定期的に掃除をしていますが、遺品は先代が生きていた頃のまま残っています。何か彼の死に関する証拠が残っているかもしれない」



 依頼人であるから当然なのかもしれないが、調査にも非常に積極的だ。

 とりあえず今聞いておきたいことはこんなものか。そう思ってお礼を言ったシエラだが、ルシウスが部屋を出ようとする直前に一度だけ引き留めた。



「あの、……ルシウスさん、どこかで私と会ったことありませんか?」



 一瞬。ほんの一瞬だけ、これまで絶えることのなかった微笑が彼の顔から消えたような気がした。

 自信が持てないのは、次の瞬間にはもう元の笑みが戻っていたからだ。



「いえ。今日が初対面だと思いますよ」


< 56 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop