元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。



 ジョシュアは照れ笑いを浮かべて頭を掻く。



「先代は花なんざこれっぽっちも興味を持ってなかったから、こちらもあまり準備のしがいがなかったものです。そのくせ飾るのを忘れたら部屋が地味だと文句を言うんですから……昔から面倒な奴でしたよ」



 面倒な奴……と言いながらも、昔を懐かしむ表情は柔らかい。

 彼はシエラの向いに座り、「この爺に応えられることならなんでもお尋ねください」と穏やかに言った。


 シエラは例の手紙の心当たりなどを一通り尋ね、大した収穫がないことがわかると、彼にも現商会長・ルシウスについて話を聞くことにした。



「ルシウスさんについてどう思うか、ですか」

「はい。ジョシュアさんから見て、彼はどのような人物でしょう」



 ジョシュアは迷ったように眉を寄せてから、今までより少しトーンを落として、内緒話をするように言った。

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