元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。




「こちらが先代が生前使っていた部屋です」



 この屋敷に住む三人全員からとりあえず話を聞き終え、シエラは約束通りルシウスに先代の部屋の案内をしてもらっていた。

 その部屋は他の部屋と同様、地味な色合いの家具で統一されていた。主がいないためにまるで生活感がない。



「机の引き出しの中なんかも好きなだけ見てもらって構いません」

「わかりました」



 果たして、一年前の死の証拠がこんな部屋に残っているものだろうか。

 そう思いつつ捜索を始めたが、机の引き出しを開けるとすぐに、何やら手がかりになりそうなものを発見した。

 日記帳だ。


 シエラは日記帳を机の上に置き、ゆっくりと開いた。他人の日記を読むというのは何とも言えない罪悪感がある。


 先代商会長は、日記は割と細かくつけるタイプだったらしい。

 その日の天気、体調、部下の様子など、読みやすい丁寧な字で記されている。


 日記は彼が亡くなった日まできっちりつけてあった。書かれているのは、お菓子を食べていてむせてしまったという他愛のないこと。


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