元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
「シエラ嬢、少し休憩してはいかがですか?」
部屋を調べるのに夢中になっていて気が付かなかったが、いつの間にかルシウスは部屋を出ていたようで、先ほどまで持っていなかったティーカップとお菓子を載せたトレイを持っていた。
「あ、じゃあお言葉に甘えて」
「どうぞ。このお菓子はうちの商会で扱っている物の中でも人気が高いんですよ。ここからずっと東の国で親しまれている焼き菓子で、先代もよく好んで食べていました」
色々と考えていたせいで、頭が糖分を欲している。
シエラは初めて見る異国のお菓子を口に放り込む。そして──
「ごふっ」
……思い切りむせた。
シンプルな甘みのある焼き菓子で、水分が少ない。一気に食べたせいで、口の中の水分が全て奪われたような感じがする。
水、水、と焦っていると、コップらしきものが視界の隅に入った。反射的に手を伸ばしてしまいそうになったが、残念ながらそれは小さめの花瓶だった。