元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。




 事件の関係者を一堂に集め、名探偵は「さて──」という言葉と共に推理を披露し始める。

 この定番の形式は、シエラにとっては探偵モードに切り替えるための魔法のようなものでもあった。


 ルシウスから依頼を受けた日から三日後。必要な情報を得るためずいぶんと走り回ったが、ようやく結論を出すための材料を手にし、関係者を集めた。

 今回は事情が周りに伏せられている。そのため関係者を集めると言っても、ルシウス、レオン、ジョシュアの三人だけだ。

 だが別に人数なんてどうでも良い。シエラは三人の視線が自分に向いていることを確認し、「さて──」と薄く笑みを浮かべた。



「今回ルシウスさんにご依頼いただいたことは二つ。『ルシウス・クレイトンは先代の商会長を殺した』という手紙を送った人物を特定すること。そして、先代がどのようにして死んだのかを解明すること」

「僕たちを集めたってことは、何かわかったってこと?」



 驚いた声をあげるレオンに、シエラは自信ありげにうなずく。

 それからゆっくり部屋の中を歩き、一人の前で止まった。


< 64 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop