元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。



「あの手紙を書いたのは……あなたですね、ジョシュアさん」



 名指しされたジョシュアは、目の前のシエラをまっすぐ見据える。その目に、焦りは見られない。



「ふむ。そう思った理由をお聞きしても良いですかな?」

「まずは手紙の内容です。『噂を広められたくなければ、商会長の座を降り、クレイトンの名を捨てろ』……違和感を覚えたのは、ルシウスさんにクレイトンの名を捨てることを要求している点です。ルシウスさんの力で商会が目覚ましい成長を遂げていることに危機感を持っている人物の仕業なら、名を捨てることまで求める必要があるでしょうか」



 レオンが「ライバルの商会の人の仕業だ」と言っていたのに、あまりしっくりこなかった理由はこれだった。



「手紙を出した人物は、ルシウスさんが商会長をしていることだけでなく、そもそも亡くなった先代と親子であったことが気に入らなかったのではないか。そう考えたとき、ジョシュアさんの顔が一番に浮かんでしまいました。だから、貴方が手紙の送り主かもしれないという線で色々探してみたんです。……これを見てください」



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