元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
シエラは一枚の紙を取り出した。商会の顧客履歴が書かれた数年前の書類だった。
「ジョシュアさん、以前右手を骨折したことがあるそうですね。その時にやむを得ず左手で書いた書類がこちらです。……この字、例の手紙の筆跡とそっくりですね」
「……ああ、こんなものが見つかってしまいましたか。これでは言い訳は難しいですな」
あまりに乱雑で、筆跡がわからないようになっていると思った手紙。正直筆跡が一致するものが見つかるとは思っていなかった。
「この商会で働く皆さんから、依頼内容を伏せて色々と話を聞いてきました。先代とジョシュアさんは古くからの友人で、お互いを誰よりも信頼し、ずっと二人三脚でやってきた」
彼らは皆、口をそろえて言っていた。先代が亡くなったとき、言葉には出していなかったが、ジョシュアは誰より悲しんでいたと。
そして、跡を継いだルシウスが、先代のやり方をガラリと変えて商会をみるみる大きくしたことを快く思っていないだろうとも。