元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
「ジョシュアさんは本気で疑っているのですよね。先代のやり方が気に食わなかったルシウスさんが、彼を殺し、今の地位を得たのだと」
ジョシュアは何も言わず、静かに目を伏せた。
そんな彼に、レオンは信じられないというような顔をして、何か言いたげにしている。一方ルシウスは、いつも通り感情の読めない目をしていた。
シエラはふわりとした後れ毛を耳にかけ、改めて三人を順に見た。
「一つ目の依頼、手紙の送り主は特定しました。では二つ目、先代の死についてです。……あらかじめ断っておきますと、これはあくまで状況証拠をもとにした推理です。物的証拠に欠けることはご了承ください」
何しろ一年前のことなのだから。その点は依頼をしたルシウスもわかっているはずだ。
シエラは一冊のノートを取り出した。先代の部屋から見つけた日記帳である。
「先代はこの日記帳に、商会で働く方々の様子から、日常の些細なことまで細かく記していたようです。先ほどジョシュアさんが左手で書いた書類を見つけたと言いましたが、彼が右手を骨折していたという情報もこの日記から知りました」