元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
しばらくの間、彼はぶつぶつと幼馴染への懺悔を口にしていた。
それから顔を上げてルシウスを見た。
「ルシウスさん。貴方を疑ったこと、あんな馬鹿な手紙を書いたこと、謝って許されることではありません。どうかわしのことはクビにしてくだされ。この商会からいなくなるべきは、貴方ではなくわしだった……」
無理につくったような笑顔が妙に痛々しい。
ルシウスは静かにジョシュアの元へ歩み寄り、手を差し伸べた。
「父のことを長年支えてきたジョシュアさんをクビにするなんて、そんなもったいないこと俺にはできませんよ。父のことは完全なる事故です。それでも責任を感じるなら、どうかこれからもこの商会に貢献してください」
「しかし……」
「それに、ジョシュアさんのことを追い出したりしたら、それこそ俺が養子の分際でクレイトン商会を乗っ取ったなんて噂されかねませんしねぇ」
ジョシュアはそれでもまだ迷いのある様子だったが、やがてルシウスの手を取った。
一件落着。
シエラはようやくプレッシャーから解放され、一人大きく息を吐いた。