元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
「あの、この暗号を渡してきたという男──もしかして、真っ黒な髪に真っ黒な目の、無駄に綺麗な顔をした異国人ではありませんでしたか?」
「……ええ、そのような見た目だったかもしれません」
「地下室!この屋敷に地下室はありますか⁉案内してください!今すぐに!」
暗号が、解けてしまった。
それは本来、絶対に解けるはずがないものだった。
数字を文字に置き換える。この方法は合っていた。
シエラは思いつく限りの言語の文字を試すうち、無意識にある言語でも試していたのだ。
日本語の、五十音。
ヤ行を「やゆよ」ワ行を「わをん」と考えると、ひらがなは46字。そのまま『1』を『あ』、『2』を『い』というように当てはめていくと──。
『あんこうはとけたようたねおめでとうしすなくんちかのへやてまつ』
そして、点が付いていた字に濁点を付けるとこうなる。
『あんごうはとけたようだねおめでとうしずなくんちかのへやでまつ』
暗号は解けたようだね、おめでとう静奈くん。地下の部屋で待つ。
この世界で日本語を使う人などまずいない。そして、前世で静奈のことを「静奈くん」と呼んだ人物はたった一人だ。