元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
「この部屋の資料、すごく役に立つんです。こんな新聞記事とかよく集めましたね」
「まあ、暇だったので。現場とは関係ない場所で無責任に色々と推理してみるのは良い暇つぶしです」
呆れ半分で苦笑いする。さすがは趣味で探偵をしていた男だ。この世界でもその質は健在らしい。
シエラは、色々な期待を込めて、こんな質問をした。
「黒瀬さん、この世界ではどんな事件を解決してきたんですか?」
「はい?」
「だって、あの黒瀬さんの記憶を持ちながら探偵をやってないなんてあるはずないですよね? どうせ今も、本業は商会長で副業が探偵とかなんでしょう?」
虚を突かれた顔をした彼は、やがて緩く首を振った。
「……期待を裏切って悪いですが、やってませんよ。探偵なんて」
「そうなんですか? あ、それなら前世の話を聞かせてくださいよ。私が死んだ後、どんな事件を解決しましたか?」