元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
「ちょうど一週間前のことです……」
男爵は、カタカタと小刻みに震えながら話し始めた。
一週間前、彼の妹であるマルガリータが、デマール家の所有する街はずれの小屋で死んでいるのが見つかった。
彼女は今年で二十五になるが、貴族女性にしては珍しく未婚で、同じこの屋敷で生活していた。近頃よくどこかへ出かけていたが、その日帰ってこなかったことを不審に思い捜索を開始した。
見つかったマルガリータは腹部を刺され、血を流して死んでいた。凶器は近くに落ちていた大きなハサミ。いくつもの浅い傷があり、まるで致命傷にならない傷をいくつも付け、十分にいたぶってから殺されたかのようだった。
「つ、次に狙われるのはきっと私だ」
男爵は顔を真っ青にして頭を抱える。
「狙われる?」
「マルガリータを殺したやつに、私も……」
「デマール男爵、落ち着いてください。何故そのように思うのですか?犯人に心当たりが?」
「き、きっと元使用人の誰かだ!復讐しに来たんだ……」