あやかし戦記 妖艶な夜に悪夢を
イヅナが捕まってしまったのと同時刻、アレンはチェルシーたちとはぐれないようにしながらキョロキョロと辺りを見渡し、レジーナの店を探していた。
「見つからないわね……」
「うん、でもこんなに店が多いと仕方ないよ」
チェルシーがウィリアムの腕に自身の腕を絡ませ、引っ付く。互いの頬は赤く染まっていて、デート中のカップルだ。そんな二人の様子を見て、ルーシーは冷ややかな目をする。
「お前たち、デートでここに来たわけではないとあの鬼の団員も言っていただろう!気を引き締めろ!」
ルーシーが言うと、「やだなぁ、イチャついてた方が自然でしょ?」とウィリアムが答える。確かに、イチャついているカップルは多いため、不自然ではない。
「……勝手にしろ」
ルーシーはそう言い、歩いていく。アレンも慌ててその背中を追いかけるが、勢いよく走ってきた人とぶつかってしまい、賑やかな通りから裏通りへよろけ、暗い地面に倒れてしまう。その際、アレンの片方の手は、裏通りに捨てられたサバトで売られている空になったジュースのコップに触れていた。誰かがここに捨てたのだろう。