あやかし戦記 妖艶な夜に悪夢を
ギルベルトがそう言いながらティーカップを口に運ぶ。イヅナもアンティーク調のティーカップを持ち、口元に運ぶ。その途端、ふわりと漂う甘い香りに心が落ち着き、ドライフルーツなどが入って華やかな見た目の紅茶に癒される。イヅナはゆっくりとその紅茶を口に運ぶ。

「……おいしいです!」

「でしょ?クッキーも食べて」

クッキーはかぼちゃやさつまいもが練り込まれており、優しい甘さである。おいしいでしょ、おいしいです、というやり取りを繰り返していたイヅナだが、廊下を忙しなく歩く足音で、ほんわかした気持ちは一気に現実に引き戻される。

「あの、ギルベルトさん!お話があると聞いて伺ったのですが……」

「ああ、そうだったね」

イヅナとお茶するのが楽しくて、そう言いながらソーサーにカップを置く彼は頬を赤く染め、幸せそうな表情である。イヅナの胸がドキッと音を立てた。

「イヅナはサバトって知ってる?」

唐突に質問されたことに、イヅナはすぐに「魔女や魔法使いたちが集まるお祭りですよね?」と返す。アレス騎士団に入団する際に習ったことだ。
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