・LOVER—いつもあなたの腕の中—
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「店長。私、本社に寄って来月から店頭に並ぶ予定の商品確認を済ませたら、直帰しますね」


 紫陽花のような淡いラベンダー色のエプロン紐をほどきながら店長に向け声をかけると、備品庫に積まれた段ボールの奥から「お疲れさまぁ、気を付けてー」と最近疲れ気味らしい店長のやる気のない返事が聞こえてきた。

 更衣室のロッカーから私物のバッグを取り出し、畳んだエプロンをしまう。ハンガーにかけていたキャメル色のコートを手にする。
 まだ冬本番とまではいかないが、最近は日中と朝晩の寒暖差もありコートの出番が増えた。身に纏ったコートは、元彼が誕生日プレゼントに買ってくれたもの。別れたのだから早く処分すればいいのに、と言われてしまいそうだけれど。

 あ、先に断っておきますが決して言い訳ではありません。

 別れた元彼のことを、引きずっているわけではなくて。ただ「処分するには勿体ないなぁ」と躊躇してしまっただけで。今年の冬も、しっかり身体を温めてもらうつもりでクリーニングにも出し、ご丁寧に保管しておいた。
 だってコートの色も形も気に入っているし、ウール素材だから軽くて着心地もいい。特に汚れていない物を捨てるには忍びなくて。……というより本音は勿体なくて捨てきれなかったのだ。

 やっぱり貧乏性なのかな、私。
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