・LOVER—いつもあなたの腕の中—

　窓ガラス越しにスタッフがテーブルから離れたことを確認した西田さんは、それら変装グッズを外し。何処からどう見ても「俳優の西田リュウ」だと分かる状態の西田さんから、心配そうに顔を覗き込まれた。


「優羽？」


　たったひとこと名前を呼ばれただけなのに。西田さんの優しい声が涙を誘う。
　目に涙が溜まっていくのを感じながら、零れ落ちないように耐え「突然電話してごめんなさい」と西田さんに謝ると「連絡くれて、嬉しかったよ」と優しい言葉を返してくれた。

　せっかく仕事も終わりプライベートな時間を過ごしていたはずなのに、急に呼び出した私を咎めることも無く西田さんは応えてくれたのだ。
　そんな優しさに甘え副社長から聞いた二人の関係や、マネージャーさんの存在について吐き出すも全く順序立っていない。なのに、支離滅裂状態の話を西田さんは黙って聞いてくれた。


「……はぁ？　俺がマネージャーを？　なわけないだろー。どこからそういう思考になるわけ？　優羽、想像力たくましいね」

「だって」

「だってじゃないよ。俺にしてみれば、分刻みのスケジュールを組んでくるような、鬼マネージャーだよ？　今なんて俺、めっちゃ働かされてるんだから。優羽だって今月の俺のスケジュール見ただろ？　鬼だよ、鬼マネ！」