・LOVER—いつもあなたの腕の中—
「ここ、お店の中ですよ?」


 他の席には数組のお客もいるというのに。あなたが西田リュウだと誰かに気付かれでもしたら、どうするの?


「見られてたって構わないよ。優羽のことを独り占めしていたい気分なんだから」

「どういうこと?」

「優羽に変な虫が寄り付かないように誰にも見られない所に隠しておきたい気分を、こうすることで我慢してるってこと」


 サラッと口にされ、なんだか恥ずかしくなった私は誤魔化すように「意味わかんない」と言ってみたけれど。

 本当は、凄く嬉しくて。肩に乗せられている頭を思い切りギュッと抱きしめたくて。今居る場所が二人きりの世界だったらよかったのに、と思ってしまう。


「こういうワガママ、嫌い?」なんて少し不安げに上目遣いで私を見つめるから。必要以上にドキドキして、キュンとして。


「……ううん」


 どんなワガママを言われても嬉しくて許してしまいそう。私に叶えられることなら全て叶えてあげたいと思ってしまうの。


「優羽もワガママ言って、優羽のワガママは俺が全部叶えたいから」


 考えていたことを先に口にされ驚いてしまう。たまたま思っていたことが同じだっただけなのかもしれないけれど。こんな小さな気持ちの一致でさえ、嬉しいと思えてしまう。
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