・LOVER—いつもあなたの腕の中—
「えー、私? そっか。そう言われちゃうと自信ないし、否定はできないかも」

「ね、だから暫くは……。周囲もリュウって呼んでるし、優羽が俺をリュウって呼んでも皆につられてて呼び捨てしてるなぁ位にしか思われないでしょ?」

「納得……」


 なんだ、私の考え過ぎだったのか。危なっかしいと思われても仕方がないことを目の前で散々披露しちゃっているし。ヘタに本名を呼び慣れない方がいいのかもしれないな。
 周囲と同じように呼ぶことも、少し寂しい気もするけど……。


「慎重になり過ぎてるかもしれないけど、本名を明かしてないから。ごめんね」

「ううん、分かった」


 時間を忘れお互いの話を始めた私達は。珈琲を何度おかわりしても話が尽きることは無かった。
 ラストオーダーの確認に来たスタッフに気付き、やっと重い腰を上げ店を後にする。駐車場へ向かう途中、見上げれば空気が澄んだ夜空には瞬く星が輝いていて。今にも降って来そうなくらい綺麗だ。


「街灯も少ないから綺麗に見えるね」

「そうだね」


 肩を並べ夜空を眺めながら、どちらともなく指を絡めギュッと手を繋いだ。
 私達は始まったばかりだけど、これから何度夜空を見たとしても。二人で眺めた星空をずっと忘れないだろう。
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