・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 夜も更け、リュウの車でアパートに送り届けてもらった私は早くも寂しくなっていた。
 おかしい。元彼と付き合っていた時、デートから帰ってすぐに「会いたい」と思うことなど無かった私が、帰って行く車を見送った途端「リュウロス」になるなんて。
 自分が思っている以上に、リュウの存在が私の中の大部分を占めていることが窺い知れる。
 こんなに寂しん坊だったかな、なんて思ってしまう。


 玄関の鍵を開け部屋に入れば。私を笑顔で迎えてくれたのは、女性誌の表紙を飾っているリュウの笑顔。さっきまでこの笑顔を独り占めしていたのに、もう会いたくなっているなんて。
 リュウの頬に、そっと指先を滑らせると。ひんやりとした紙の質感が指に伝わる。


 リュウは私を独り占めしたいと言っていたけど、私こそリュウに言いたいよ。誰にも見られないようにリュウを隠しておきたい。
 そんなことを願ってはいけないことだと百も承知だけれど。ワガママを言ってしまいそうで怖い。
独占欲の塊なのはリュウじゃなくて私の方かもしれない。

 バッグから携帯電話を取り出しロック画面をリュウの後ろ姿越しに撮った、瞬く星空に変更する。
寂しさを紛らわせるように見つめていると、着信音が鳴り慌てて電話に出た。
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