・LOVER—いつもあなたの腕の中—

「みんな職人だ、凄いなぁ」


　ポロッと独り言を呟く私に気づいたのか、準備をしているスタッフを眺めながら「そりゃそうさ、俺が信頼しているスタッフさん達だからね」と言いながらリュウが隣りに立った。
　リュウは既に衣装に着替えヘアメイクも終えている。
　右分けで流されている前髪がふわふわと遊んでいるようにウェーブがかっているのは、メイクさんの技だ。サラサラの髪も綺麗だけれど、少し毛先を遊ばせている感じは白シャツを第二ボタンまで開けているリュウをより色っぽく素敵に魅せる。なにもかもリュウが一番魅力的に見えるよう計算されていた。
　だから、そんな姿を横目で視界に入れてしまえば当然目のやり場に困るし。より一層ドキドキしてしまう。


「優羽、今日は一日一緒に行動できるね」

「そ、そうですね。宜しくお願いします」

「あれ？」


「今は二人しかいないんだから……」と言いかけたリュウに「仕事中ですから」と、そっけなく答え。サッとリュウから距離を取るように離れる。


　どうしよう。上手くかわせずに、いかにも避けているような態度を取ってしまった。
　直接顔を合わせていない時でも声の変化を感じ取り私の心情を分かってしまうくらい繊細なリュウだから。今のは絶対に違和感を感じているはずだ。