・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 しかし、そんな心配など無かったのか。スタッフに呼ばれたリュウは笑顔で返事をしスタッフの元へと向かって行った。

 撮影は順調に行われポスター撮りと同時進行で動画撮影も行われている。購入特典やプレゼント企画に出来そうなものは少しでも多く確保しておきたいと、オフショットや制作動画も撮り溜めるのだそうで。撮影開始からリュウの傍には常にカメラがついて回っていた。
 撮影の邪魔にならないように、映り込まないようにとスタジオの隅に身を寄せながら。そんなリュウの姿を長時間見ていて思ってしまった。


 これじゃあ気も休まらないよね。途中で趣味に逃げ出したくなる気持ちも、少し分かるかも。

 仕事のうちだと言われてしまえば、それまでなのだが。さすがに休憩時間までカメラがべったりと張り付いているなんて、知らなかった。
 リュウはカメラの前で疲れた顔や嫌そうな表情など一切見せず、カメラの向こうでリュウの姿を見るであろうファンをイメージしているのか。自ら撮影のアイデアを出してみたりと、常に笑顔と真剣な姿を絶やさなくて。
 そんなリュウの姿を目の当たりにしてしまっている私は、見ているだけで鼓動が乱れ落ち着かない。
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