・LOVER—いつもあなたの腕の中—
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 リュウ達が座っている席へと向かう途中、各テーブルの間を縫って歩いて行く際聞こえてくるのは各席での会話だ。死角席で取材を受けていたが、中にはリュウが来店中だと気付いている女性客もいた。
 けれど仕事中だということを考慮してくれているのか、大騒ぎにはなっておらず。各テーブルでコソコソと話したりこの場に遭遇できたことを嬉しがっているように、リュウに熱い視線を向けていた。


「遅くなりました」


 マネージャーさんに声をかけ雑誌編集者へ会釈をした私は、顔を上げながらリュウに視線を向ける。しかしリュウの視線が私に向けられることは無く、淡々と雑誌編集者からの質問に答えていた。


 全く見ようとしてくれないってことは、やっぱり私に怒ってる……んだよね?



「H&T㏇の方も到着されましたし、文房具についてお話を聞かせていただけますか? 西田さんが現在愛用されているのは、こちらですか?」と雑誌編集者はリュウに質問を投げかけながら、テーブル上に置かれた手帳に視線を落とした。


「えぇ。これ、凄く紙質もよくて書き易いんです。レイアウトもいいし、スケジュール管理には最適ですよ」

「でも、こちらの手帳は一般販売していませんよね?」
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