・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 目の前にはマネージャーさんと、その背景に見えているガラス越しの風景だけ。背中にはさっきまでリュウに気付き熱い視線を向けていたお客さん達が居る。


「あ……の」

「リュウのことは、諦めていただけませんか?」


 単刀直入。リュウとの付き合い方に釘をさしてくるどころか、直球勝負で「即刻別れろ」ということか。
 確かに、仕事相手と所属タレントが付き合っているなんて知れば、事務所側の要求はひとつだろう。分かる。分かるよ、マネージャーさんの言いたいことは。
 ちゃんと理解も出来るけど、簡単に「分かりました」と首を縦に振れないのは、リュウのことを俳優としてではなく一人の男性として好きになってしまったからだ。
 偶然出逢った後、リュウがどんな人なのかを知ってから。ミーハーな気持ちで、いちファンとしてリュウの出演するドラマや映画を観たり雑誌を手にしたりしていたけれど。
 私に気を許してくれている普段のリュウを知るほどに、有名人だからとか関係なくリュウに惹かれてしまっていたから。


「真島さんもご存じの通り今が一番注目されていて。その証拠にあちこちから仕事のお話もいただいています。役者としても大きく成長できるチャンスでもあり、今まで舞台で掴んで来たファン層だけでなく一般層も取り込みたい。周囲からの視線を受け注目されている今こそ、事務所としてもリュウの存在価値を上げたいんです」
< 138 / 253 >

この作品をシェア

pagetop