・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 掴まれた手に力が入れられ。リュウの本気度が繋いだ手から伝わってくるみたいに感じる。
 だから。だから私も、リュウの気持ちに負けない位に力強くリュウの手を握り返す。


「行こう。車は俺が使うから、悪いけど公共機関を使って事務所まで帰ってよ」

「待ちなさい、リュウ!」


 マネージャーさんの制止を振り切り、各テーブルを縫うように出口へ向かうリュウと私に気付いたお客さん達から目で追われる。そんな視線を浴びながらも店内で手を引かれている間、私の目にはリュウの背中しか見えなくて。前しか見ていないリュウも、私の手を離すことなく店を飛び出した。

 カフェ近くに停めたという、リュウの車に乗り込み。エンジンをかけたリュウは「俺、ヤバイことしちゃったかな」と今更ながらポツリと呟いた。


「うん。多分、相当ヤバイと思う」


 リュウは仕事より私を取ってしまったのだから。この先、穏便に事が進むわけがないことくらい容易に想像できる。


「でも、リュウが迷うことなくハッキリ言い切ってくれて私は嬉しかったけど」と気が緩んだ弾みに、つい本音をポロッと口走ってしまった。
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