・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 慌てて口を両手で押さえてみても後の祭り。私の呟きは完全にリュウの耳へ届いてしまっていたらしく。
 そっとリュウの手が伸びてきて私は抱き寄せられていた。まるで宝物を抱きしめるように優しく包み込まれたらリュウの腕の中で安心してしまい。両腕をリュウの背中へまわし、シャツをギュッと掴み目を閉じる。


「ねぇ、取り敢えず俺の部屋に来ない?」


 耳元で囁かれ埋めていた胸元から思わず顔を離し、リュウの顔を見てしまう。目が合ったリュウは真面目な顔で私を真っすぐに見つめていたから、思いつきや冗談で言っているのではないことは分かる。
 けれど……。


「この状況で、なに言ってるの?」


 リュウが何をしようとしているのか考えているのか分からなくて聞き返してしまった。頬にかかっていた髪に指を添え私の頬を撫でるように指を滑らせたリュウ。
 そんな仕草にさえドキドキさせられてしまうなんて。この状況が分かっていないのは、むしろ私の方かもしれない。


「今、俺達が離れたら。このまま別れさせられて、会えなくなるような気がするから」


 後のことを考えるためにも今は一緒に居よう。と提案された私は暫く考え込んだ。
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