・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 会社への連絡を無事に終えた私はリュウの支度を待つ間、真っ白なソファに腰かけ周囲を見渡してみる。
 リビングに太陽光が差し込み、白を基調とした室内を更に明るい空間へと演出している。ガラスのダイニングテーブルには二人分の椅子が収まりスタイリッシュだ。
 そのくせ壁にはリュウが声優として参加したらしい、アニメ映画のポスターが貼られていたりして。ファンタジーちっくで、少しちぐはぐしているように見える。テレビボードに眼鏡やサングラスが並んでいるのに、隣には台本やDVDが山積みだったり。

 さっきのブルックリン風カフェのようなお洒落な空間もリュウには似合っていたけれど、特に何風というような括りで部屋を作っていない所が私としては好感が持てた。
 好きな物を好きなように集めた、おもちゃ箱のような感じが多趣味のリュウに似合っていると思えたから。
「もう少し待っててね」と荷物を集め右往左往しているリュウは、遠足前の準備をしている子供みたい。楽しそうに「あれも持っていこう、これも必要」なんて、ブツブツ言いながら荷物を用意しているから、声をかけたくなる。


「時間あるし、慌てなくてもいいよ」


 リュウが準備にてこずってくれているほど、私がリュウの部屋に居られる時間が長くなるのだから。
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