・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 ……ですよねぇ。
 年配のオジサマ社長に比べたらうちの副社長は若くて将来性があり、尚且つ男前の有望株。
 こんな時くらいオヤジ臭が漂ってきそうな油ギッシュなオジサマの相手をするよりも、イイ男の相手をしたいと考えるのは当然の思考だ。

 よく見れば両側の秘書さん達の目は完璧に副社長をロックオンしていて。あわよくば副社長にお持ち帰りされたい、とアピールしているようにさえ見える。


 だめだこりゃ。副社長自身も、両サイドの秘書さん達に困っているみたいだし。自分の身は自分で守るしかないってことか。


 副社長を見ていた私の肩に手を乗せたオジサマ社長から「ほら、遠慮せずに飲みなさい」と熱燗が並々注がれているお猪口を手渡された。

 ほぼやけくそ状態でお猪口に注がれていた熱燗をグイッと喉に流し込めば、喉元がやけるように熱く感じる。日本酒なんて普段は飲まないから、美味しいなんて思えない。


 副社長のバカバカバカ!
 私が流されやすいって分かっているのに、どうしてこんな席に同席させるかな。


 そんな不満を抱えながらも、同席している秘書さん達を真似て愛想笑いを浮かべる。多分、顔は引きつっているはずだけれど酔っ払いたちには分かるまい。
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