・LOVER—いつもあなたの腕の中—

　リュウがニューヨークへ発つまでの数日間は慌ただしい日々が続き。出発を控えていたリュウは、落ち着いて台詞を覚え役を作り込む時間さえまともに確保できず。
　結局、現在進行形で進められていた連続ドラマ撮影の合間を縫いながら、台詞を入れるという作業を行わなければ間に合わない状況に追い込まれていた。


「ご飯できたよー」


　時間の許す限り時間を共にしたい、というリュウのお願いを受けた私は、高層マンションの上階に位置しているリュウの部屋で生活していた。
　リビングからの眺めは最高の景色で、見下ろせば道路を走る車はミニカーのように小さい。遮るものが何もない景色は何処までも見渡せ、いつもなら遠くに見える飛行機や新幹線もよく見えて。
　何もかもミニチュアのようで、なんだか自分が神様になり天空から地上を眺めている気分になれる。


「お、美味そう。いただきまーす」


　ハフハフしながら出来立てのご飯を頬張っているリュウが可愛くて。後頭部の髪がぴょんと跳ねているのも愛らしい。
　ダイニングテーブルで向かい合い頬杖をつき暫くリュウを眺めていると、ふいに「なんだか夫婦みたいだね」とリュウが呟くから。


　いつか、そんな日が来るといいな。


……などと心の中で願ってしまった。