・LOVER—いつもあなたの腕の中—
「本当にご一緒しても宜しいんですか?」

「あぁ、君達のような可愛い子を連れて行けば先方も喜ぶよ」


 どう見ても若くて可愛い女の子達を相手に、ナンパしているようにしか見えないのだ。

「おかしいよね」と私に確認する芽衣に「……うん」と呟く。
 出張が多く、たまにしか見かけていない芽衣でさえ副社長の異変に気付くくらいなのだから。きっと、他にも副社長が変だと感じている社員がいるはず。


 なんか嫌だな。チャラさ満点な感じがすると、私にとって副社長はリュウの姿にも重なって見える分だけタチが悪い。
 リュウが女の子をナンパしているように錯覚してしまうし、見ていられない。


「ごめん、ちょっと行ってくる」

「優羽?」


 受付で楽しそうに談笑している副社長に駆け寄ると、強引に右腕を取り引っ張る。突然掴まれた腕に異変を感じ、顔を私に向けた副社長は不思議そうだ。


「お話し中に申し訳ありません、少しよろしいでしょうか」

「えっ……と」


 突然の私の登場に戸惑っている副社長の腕を強引に引きエレベーターに乗り込む。扉が閉まる直前、副社長が私に言った。


「俺に何か用? あ、今夜は君と約束していたんだっけ? 確か……真島さん」
< 169 / 253 >

この作品をシェア

pagetop