・LOVER—いつもあなたの腕の中—

　でも、どこか違和感を覚えるのは何故だろう。リュウと錯覚してしまう程、同じ雰囲気が副社長からも感じていたはずなのに。
　それとも。晴海ちゃん達と楽しそうに話している姿を見た時から、やはり二人は違うのだと無意識に自覚できたのかな。


「止めて下さい、ここは社内です。あなたは我が社の副社長で、私が帰りを待っているリュウではありません」


　リュウの代わりになどならないし、なれないのだと伝え。ありったけの力を込め腕を伸ばして、副社長の腕からすり抜ける。
　そんな私に向かい「どいつもこいつもリュウリュウって言いやがって。どこが違うんだよ！」と当たるように副社長が怒鳴った。


　ビクッと肩を上げ目を見開き驚きを隠せない私に気付いた副社長は、落ち着きを取り戻そうと深く息を吐き。「俺のすることに一々意見するな」と呟くと、上昇していたエレベーターが私の職場階で止まり扉が開くと同時に、力いっぱい背中を押されエレベーターから降ろされた。

　躓きながら足で踏ん張り、振り返ったけれど。既に扉は閉じ上昇してしまっていた。


　あれ程取り乱した副社長を見たのは、初めてだ。もしかして、副社長にとってもリュウが地雷だったの？