・LOVER—いつもあなたの腕の中—
　私を跨ぎ、真上から見降ろしている副社長はリュウと同じ顔をしているのに。最近は社内で何度も顔を合わせているし、会話もしていたし、お酒の席にも同行した。
　それなのに、どうしてこんなに「怖い」と感じているのだろう。
　まるで、知らない人みたい。


「……やっぱり、あんたもリュウが一番いいわけ？」


　ポツリと呟いた副社長は私から離れ背を向けると、着ていた洋服の乱れを直し始めた。
ソファから起き上がり、そんな副社長の背中を目で追う。


「やってらんねぇ。リュウに会ったら、俺はもう手を引くと伝えておけよ」

「副社長？」

「……もしかしてリュウから何も聞かされてない、とか？」

「え？」


　副社長が何を言っているのか、理解できていない私に「後はリュウから直接聞けばいい」と言葉を残し部屋から出て行ってしまった。

　リュウの部屋に残され、無意識に自分の身体を抱きしめている。小刻みに震えているのは、迫られた恐怖からなのか。
　それとも、自分自身に起きた出来事を脳が処理しきれずにパ二くっているのか。

　全てはリュウから直接聞けと副社長は言っていた。リュウと副社長の間には、私が知らない秘密があるとでもいうのだろうか。
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