・LOVER—いつもあなたの腕の中—
言われてみれば。リュウの気分を変えるために「裕隆さん」と呼んだ私を、リュウは拒絶した。もの凄く不機嫌になり本名を呼ばれることを拒否したのは、リュウが「裕隆さん」ではなかったからなのか。
「正真正銘、俺が吉野隆好で西田リュウなの。弟の裕隆はフリーターで小金稼ぎに丁度いいからって俺の頼みをきてくれてた」
リュウとしての仕事が増え始めた頃から、時折二人が入れ替わっていたことに誰も気づかなかったのは、普段から一般社員とは滅多に顔を合わせたことがない身だったことが幸いしていたのだという。
けれど、最近は裕隆自身の性格が表に出始めてしまっていて。本来の隆好としての副社長像が崩れ始めていると秘書の高田さんから報告は受けていたらしい。
「アイツも、もう影武者みたいなマネが嫌になったのかもな」
もともと二足の草鞋を履こうなどということ自体、無理があったことだけれど。社長の息子で長男という理由だけで次期社長というレールを敷かれてしまい。何かに興味を持っても、レールから外れることは許されず。
そんな不満が溜まっていったリュウは、いつからか親への反発心が育ち。会社を継ぐことを素直に納得できなくなっていった。
「正真正銘、俺が吉野隆好で西田リュウなの。弟の裕隆はフリーターで小金稼ぎに丁度いいからって俺の頼みをきてくれてた」
リュウとしての仕事が増え始めた頃から、時折二人が入れ替わっていたことに誰も気づかなかったのは、普段から一般社員とは滅多に顔を合わせたことがない身だったことが幸いしていたのだという。
けれど、最近は裕隆自身の性格が表に出始めてしまっていて。本来の隆好としての副社長像が崩れ始めていると秘書の高田さんから報告は受けていたらしい。
「アイツも、もう影武者みたいなマネが嫌になったのかもな」
もともと二足の草鞋を履こうなどということ自体、無理があったことだけれど。社長の息子で長男という理由だけで次期社長というレールを敷かれてしまい。何かに興味を持っても、レールから外れることは許されず。
そんな不満が溜まっていったリュウは、いつからか親への反発心が育ち。会社を継ぐことを素直に納得できなくなっていった。