・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 だから。
少しでも自分のしたいことを叶えようと、舞台俳優からスタートしたのだった。
 ただ、俳優として注目を浴びるようになり。仕事量が想像以上に増え始めてしまったことで「役者をしながらも副社長としての職務もしっかりこなす」という、社長との約束を守れそうにないと判断したリュウは。
 俳優の仕事を失うことを恐れ、当時フリーターで職を転々としていた弟の裕隆に身代わりを頼み込んだことから始まった二人一役だったというのだ。

 一緒に居る時のリュウに関しては。出逢った頃からリュウと会っている際に感じていた雰囲気や印象は、いつも同じだった。
「違う」と感じたことはなかったのだから、リュウは本物のリュウで間違いないと自信を持って言えるけれど。


「結局、私が顔を合わせていた副社長って、いつも弟さんの方だったの?」


 訊ねた私に大きく首を振り否定したリュウは「優羽の傍に居たくなってからは副社長として会っていたのは、ほぼ俺だった」と教えられた。


 ただ、残業をしていた私にジュースを差し入れしてくれたお礼を言おうと、副社長を玄関先で見つけ。駆け寄り私が声をかけた朝はリュウ本人ではなかったらしい。
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