・LOVER—いつもあなたの腕の中—
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　隆好のことだけを見ていればいいと、言われたけれど。どうにも目についてしまうのは「副社長の吉野隆好」だ。


「で？　この前話していたバーには何時行こうか」

「そうですねぇ、今度の週末いかがですか？」

「いいね」


　今日は朝から「裕隆さん」の方が出社してるのかぁ。


　隆好から本当のことを知らされて以来、私の目には確実に二人の見分けがつくようになっていた。
　どうやら隆好は、裕隆さんと話し合いの場を持ち。今回は私の甘さと隙から生まれた出来事であり、尚且つ裕隆さん自身も私をからかうつもりで近づいただけだと認め、最初から襲おうとまで考えていなかったことを口にしたので。
　これ以上は追及しないかわりに、私には指一本手を出さないと約束させ。今まで通り、代役を務めてもらうことになったらしいのだ。
　聞こえようによっては、隆好が裕隆さんの弱みを握った形での協力強要にも感じてしまうけれど。


　だからといって、これでいいの？　社員達が行き交うロビーで、大っぴらにナンパしてるなんて。


　いいのか悪いのか、隆好の姿をした裕隆さんの目に余る行為は連日続けられていた。これを割って止めた方がいいのだろうか。と独り悶々としてしまう。
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