・LOVER—いつもあなたの腕の中—

　掴まれている手首が痛くて。隆好だったら、こんなに強引なことはしないだろうな。と考えてしまう。

　エレベーターの扉が開き先に乗り込んだ裕隆さんに強く引っ張られ、中に飛び乗ってしまった。


「で？　結局、何がしたかったわけ？」


　壁際に追い込まれ逃げ場を失くした私は。こんな状況にもかかわらず「こんなシチュエーション、前にもあったな」なんて、軽くデジャヴに浸ってしまう。


「真島……優羽。もう俺と隆好を見間違えたりしてないんだろ？」


　見透かしたように尋ねられ、数回無言で頷く。そんな私に「だったら、俺が何をしようとアンタには関係ないよな」と言葉を続けた。


　確かに関係ないよ、直接的には。
　でも。社内でのあなたの言動は全て「隆好のしていること」になるわけで。
　もしも今までのようにやり過ごしてくれないのなら、その違和感に疑いを持つ社員が出てくるかもしれないし。


「私はクールで仕事が出来る副社長が好きです」

「は？　なに急に」

「ですから、こんな女たらしみたいなマネはしてほしくないし見たくないんです。例え中身が隆好に扮している裕隆さんでも」


　そう口にした私を裕隆さんは鳩が豆鉄砲をくらったように、目を丸くして見下ろしていた。