・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 迷っているのなら、迷ったままでも構わないということ? 後の心配などせずに、今の気持ちに正直に従えばいいってことなの?


 ならば、答えは既に出ている。
 私は「俳優 西田リュウ」のファンで、彼の制作したショートフィルムを観たいと思っている。
 どんな風にリュウの魅力を映し出しているのか、その魅力に惹かれてみたいと。


「えぇい、後はどうにでもなってしまえ!」


 勢いに任せ「出席」の返信をし、パソコンを閉じた。
 そんな私の背後で、何時から立っていたのか。深山さんから「真島、ちょっといいかな」と肩を叩かれた。


「はい?」


 振り返り見上げると、こめかみ辺りを何だか調子悪そうに掻いている深山さんが「ラウンジで話そうか」と親指を立てクイクイと動かし、職場の出口付近を指していた。


 なんだろう。仕事でミスしたのなら、この場で注意を受けるのが常なのに。
 わざわざ場所を変えてまで話したいことって、なんだ?


 言われるまま椅子から立ち上がり、深山さんの後を追う。周囲の視線は変わらず冷たくて痛い。
 こんな時に芽衣が出張中で不在なのが、余計につらいかも。芽衣が居たらどんな理由であろうが仕事に無関係なことに対し、喝を入れてくれるのにな。
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